会場となったUCSBキャンパス内にあるStorke Tower
Compound Semiconductor Week (CSW) は、International Symposium on Compound Semiconductors (ISCS) とInternational Conference on Indium Phosphide and Related Materials (IPRM) を同時開催した化合物半導体に関する国際会議です。その会議の中では高周波デバイスやナノ構造、結晶成長、窒化ガリウムを用いたLEDやレーザなどの分野を対象に議論が行われています。
今回のCSW 2015は、6月28日~7月2日にアメリカ合衆国のUniversity of California Santa Barbara (UCSB) で開催されました。昨年、ノーベル物理学賞を受賞された中村修二先生はこのUCSBの教授であり、本会議では招待講演者として参加されていました。そしてInGaNを用いたLED・レーザができるまでの背景と今後の展望について講演されていました。また、同様に招待講演者である米intel社のRobert Chauさんは、将来のナノエレクトロニクス用デバイスの研究について、炭素やスピン、トンネル効果などを用いたFETについて講演されていました。この他にも、大学や企業を問わずそれぞれの分野で最先端の研究をされている著名な研究者の方々が参加されていました。
“Molecular Beam Epitaxial Growth of GaAsBi Nanowires on Si(111)”という研究テーマで発表しました。GaAsBi(ガリウムヒ素ビスマス)は新規赤外発光材料として期待される化合物半導体であり、GaAsやGaBiといったバンド構造計算からオージェ再結合過程を抑制することによる発光効率の向上に期待されています。また半導体ナノワイヤについて、ナノワイヤはワイヤ1本でレーザとして動作する単一レーザが他の材料では作製されており、従来の半導体レーザと比べて超小型半導体レーザの作製に期待されています。
実験では、Ga自己触媒VLS成長機構を用いたMBE成長によるコア-マルチシェルGaAs/GaAsBi/GaAsナノワイヤの作製を試みました。GaAsBiシェル成長時には、同時にBiを照射することでワイヤへのBi導入を試みました。
試料のSEM像から、Si基板全体にナノワイヤと微小結晶粒子が形成されていることがわかりました。また、従来報告されてきたナノワイヤはシャープなファセットを有する側面形状であったのに対して、試料のナノワイヤは凹凸のある側面形状をしていました。TEM/EDX像から、ワイヤ全体で1%弱のBiが確認され、ワイヤの先端部位や一部で2%弱のBiが確認されました。次に、室温にてカソードルミネッセンス測定を行い、光学特性を調べました。1本のナノワイヤの測定箇所によって発光スペクトルは異なりましたが、全体的に長波長化が見られ、GaAsBiのBi組成2%の場合に見られる1.24eVの発光ピークも多く確認されました。これらの結果は、GaAsナノワイヤの成長中にBiを同時に照射することでGaAsBiナノワイヤが作製されることを示唆します。
今回が初の海外渡航、国際会議であったため、全てのことが初めてであり貴重な経験をしました。国際会議の始め“Welcome Dinner and Reception”にて海外の学生さんが話しかけてくれて、簡単な自己紹介と研究内容の紹介をしました。お互いに母語が英語ではないため拙い英会話であったと思いますが、聴き直したりジェスチャーを交えたりすることでコミュニケーションを図り、最後には一緒に記念撮影をしました。積極的な学生さんのおかげで多くの人と仲良くなることができ、素直に嬉しかったです。同時に、日本にいるときの様にもっと話をして彼らのことを知りたいと思いました。その為には自分の言いたいことを表現する英会話のスキルが必要で、帰国してから勉強したいと強く思いました。
また、自分の興味がある分野で最先端の研究をされている方の講演を聴講することができました。論文でも内容を確認することができますが、講演の中で討論がなされ他の先生方の意見も聞くことができました。
最後に、本国際会議に参加するにあたり、支援をしていただいた一般財団法人丸文財団に心より感謝いたします。