私がこの度参加したInternational Symposium on Compound Semiconductor 2014 (ISCS2014)は今年で41度目の開催を迎え、26度目の開催となるInternational Conference on Indium Phosphide and Related Materials 2014 (IPRM2014)と共にCompound Semiconductor Week 2014 (CSW2014)の傘下でフランスのモンペリエで行われました。今年はフランスで行われましたが、昨年は日本、来年はアメリカと世界の様々な地で行われている国際会議です。
CSW2014は5月11日から15日までの5日間、世界各国から集まった研究者によって約40件の招待講演と約180件の口頭発表と約90件のポスター発表が行われました。参加者は地元開催のフランスと日本から約90人ずつと大半を占め、他にドイツやアメリカから約20人ずつなど多くの参加がありました。ISCS2014は成長技術関連からデバイス応用関連までと幅広い内容の発表が行われており、私はその中で量子井戸や量子ドットに関する内容を扱うNanocharacterizations and Nanostructuresでポスター発表を行いました。
私は「Anomalous excitation power dependence of the luminescence from GaAsN/GaAs quantum well」の研究テーマで発表を行いました。GaAsN/GaAs多重量子井戸を用いたフォトルミネッセンス測定により、複数の発光ピークが観測されました。ここで高エネルギー側の発光について、ある励起強度を超えると発光強度が減少するというこれまでに報告例のない異常な励起強度依存性が見られました。フォトリフレクタンス測定と準位解析を行い、井戸層に5つの準位が存在することを確認し、高エネルギー側の発光は井戸層に形成される最も高い準位(n=5)からの発光だと分かりました。異常な励起強度依存性はトンネル効果によって井戸層から電子が基板と表面に移動したため生じたと考えられます。この結果は、従来より論争のあったGaAsN/GaAsヘテロ界面におけるバンドラインナップがtype-IIであることを強く示唆するものです。この発表に対する討論の内容は主に、1.高エネルギー側の発光はGaAs:Cの発光ではないのか、2.なぜn=5の発光が見えてそれより低エネルギー側のn=4,3,2の発光は見えないのかというものでした。私は1の質問にはGaAs:Cであれば励起強度増加に伴う発光強度の減少は生じないと考えられ、また準位解析の結果よりn=5とエネルギーが一致しているので高エネルギー側の発光はGaAsNの発光であると回答しました。2の質問にはn=4による発光はn=5の1/10の発光強度で見えること、n=3,2は見えていないことを示しました。
私はこの国際会議に出席することで、研究結果の再検討の必要性、研究に対するモチベーション、自分の英語スキルの不十分さを認識することができました。研究結果を発表し、質疑応答をすることで自分の研究に不足しているデータ、今後の方針を見出すことができました。今後はフォトルミネッセンスの温度依存性の測定と障壁層がより厚い試料の評価を行っていくことにしています。また、国際会議に参加していた学生と日頃の研究状況について情報交換することで、自分にはまだ研究に対する情熱が足りないと感じ、同じ学生に負けたくないという気持ちが強くなり、今後の研究に対するモチベーションを上げることができました。さらに、質疑応答や会話をする際に今の英語スキルでは自分の言いたいことをうまく伝えられないことを実感することができました。日頃から論文を読んで英語に触れることで、発表の際には少しは話せるのではないかと考えていた自分の認識は甘く、日頃から英語で話す機会こそが英語でのコミュニケーション能力の向上につながると思いました。今後は自ら積極的に英語を使う機会を設けることで、円滑なコミュニケーション能力を得られるように英語スキルを向上していきます。今回の国際会議に参加した経験は、社会人になって海外で活動をする際に役に立つ貴重なものだと思います。次に海外に行くときのために、現在から英語スキルを向上して、より充実した機会にできるようにしたいと思いました。