国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

平成26年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
高階 明子
(茨城大学 大学院理工学研究科 応用粒子線科学専攻)
会議名
12th European Biological Inorganic Chemistry Conference
期日
2014年8月24日~28日
開催地
スイス チューリッヒ

1. 国際会議の概要

European Biological Inorganic Chemistry Conference (EuroBIC)は1992年にイギリスのNewcastleにおいて初めて開催され、今回で開催12回目となる国際会議です。ヨーロッパを中心として世界各国から参加者が集まり、無機化学とライフサイエンスとをつなぐ最新の研究内容が議論されます。今回EuroBIC12が開催されたのはスイスのチューリッヒ大学(Eva Freisinger教授およびRoland Sigel教授主催)で、招待講演を含む口頭発表が161件、ポスター発表が305件という発表件数でした。本国際会議では、自分自身の研究内容に関連する最新の研究報告をうかがい、新しい知見を得て、研究を推進すること、および世界中の研究者との交流を深めることを目的として参加しました。

次回のEuroBICは2016年、ハンガリーにおいてSzeged大学のTamás Kiss教授およびDebrecen大学のImre Sóvágó教授の主催によって開催されます。

国際会議会場

ポスター発表会場

2. 研究テーマと討論内容

本研究においては、一酸化窒素と反応し、バイオセンサーとして活用できる蛋白質であるシトクロームc’についての研究を行っています。シトクロームc’は、水質、土壌を浄化する微生物に含まれる蛋白質であり、酸素とは反応せず一酸化窒素や一酸化炭素と反応するという性質をもちます。本研究では、シトクロームc’を一酸化窒素センサーとして応用する際に必要となる詳細な構造と分光学的性質について研究を行ない、X線結晶構造解析、磁気円二色性スペクトル、エレクトロスプレー質量分析、レーザーラマン分光法等を駆使することによって、シトクロームc’が一酸化窒素と反応した際の構造や分光学的性質変化について、総合的知見を得ることに成功しました。また、構造や分光学的性質のpH応答性から、多様な一酸化窒素センサーとして応用することの可能性についての基礎的知見を得ることができ、国際会議においてはこれらの結果について報告しました。

ポスター発表は約2時間半の発表時間で、これまで知られていなかった塩基性条件下における蛋白質の結晶作製方法や、塩基性条件下での性質変化の理由などの質問を受け、討論によって自身の研究の理解をより深めることができました。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

ポスター発表の様子

本国際会議に出席したことにより、多くの海外の同世代の研究者と研究内容について議論を深めることができました。これまでに国際会議には何度か出席しておりますが、今回の国際会議での発表が一番多くの方に聞いていただくことができました。特に、自分自身の研究と類似した研究手法で取り組んでいる方と議論する機会にも恵まれ、今後の研究を進展させるきっかけとなりました。その他自分自身が取り組んだことのない研究手法が専門の方に、蛋白質の性質をより正確に見るのにどのような測定手法を行ったら良いか等のアドバイスもいただきました。研究に関する議論だけでなく、お互いの研究を行っている環境や、在住している国の文化についても情報交換を行なうことができ、日本との違いやそれぞれの良い面を認識することができました。コミュニケーションは英語が基本でしたが、開催地であるスイスでは、公用語はドイツ語、イタリア語、フランス語、ロマンシュ語とされている事実を知り、英語の他にも言語を習得することがよりコミュニケーションを向上させる鍵となることを実感しました。

最後に、国際会議に参加するにあたり多大なご支援を賜りました貴財団に深く御礼申し上げます。

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