国際会議会場
International Conference on Strongly Correlated Electron Systems 2014 (SCES2014)は、物質中の電子のクーロン相互作用が強い、いわゆる強相関電子系の物性分野における最も規模の大きい国際会議のひとつとして年に一度開催されています。今回はフランスのグルノーブルにて開催されました。38か国もの国々から、800人以上の参加者が集まり、13のトピックスに分かれ、200件以上の口頭発表と約1,000件のポスター発表が行われました。
次回のSCESは、International conference on Magnetism (ICM)のトピックスの一つとしてスペインのバルセロナで開催されます。
超伝導体には大きく分けて格子振動を媒介とする「BCS型」とそれ以外の「非BCS」型の2種類に分類することができ、非BCS型の酸化物、鉄ヒ素、重い電子系超伝導体はBCS型のものと比べて高い転移温度を持つものが発見されています。しかし、現在、これらの超伝導発現機構ははっきりとはわかっていません。また、非BCS型超伝導体は超伝導状態近傍において磁気秩序状態が存在しているため、超伝導発現機構を知るには、磁性についての研究も必要不可欠です。
発表したポスター
本会議では、「Intermediate Valence Behavior of β-YbAlB4 under Hydrostatic Pressure」というタイトルでポスター発表を行いました。重い電子系Yb化合物で初めて超伝導が観測されたβ-YbAlB4は、Ybイオンの価数揺らぎが超伝導発現機構の原因ではないかと理論で示唆されています。実際に、Ybイオンは化合物中でYb2+とYb3+のどちらかの価数をもつことが期待されますが、β-YbAlB4は光電子分光測定の結果から中間価数2.75をとることがわかっています。しかし、超伝導転移温度が80mKという極低温であることから、超伝導状態の価数測定を直接行える環境は現在ありません。そこで、私は、超伝導状態近傍に存在している磁気秩序状態の価数について研究を行いました。
二時間のポスター発表における参加者との討論では、X線吸収スペクトルからどのようにYb価数を見積もっているかという質問が多く出ました。その理由として、β-YbAlB4は中間価数2.75という非常に3価に近い値をとるため、吸収スペクトルにYb2+の成分がほとんど見えないことが挙げられます。また、低温・高圧力・強磁場下における価数測定は世界でもほとんど行われておらず、多くの方に興味を持っていただいた。
グルノーブルの街並み
本会議では、国内での会議とは異なり、海外の研究者と多くの議論を交わすことができました。また、会議期間中、グルノーブルにある大型放射光施設ESRFを見学することができました。日本の大型放射光施設SPring-8との違いを知り、同じような実験を行っている研究者の方にビームラインの説明をしていただき、とても勉強になりました。英語で議論をする機会は国内ではあまりなく、とてもいい経験になったと同時に、相手に正確に内容を伝えるための英語力を更に向上させることが今後の課題となりました。今回滞在したグルノーブルは日本と比べて湿度が低く、雨のため気温も低かったため、とても過ごしやすかったです。
最後に、本会議の参加に対して多大なるご支援をいただきました一般財団法人丸文財団に深く感謝し御礼を申し上げます。