2014 ICJR Pan Pacific Congressは主に骨や関節の置換術をテーマとする整形外科分野の会議である。約750名の欧州、北米、アジアなど世界各国の整形外科ドクターが出席し、整形外科手術のあり方について議論する。このような、整形外科ドクターが多く参加する国際会議にインプラントの開発に携わる工学者の立場として出席した。研究成果の発表を通して整形外科のドクターと議論を交わし交流を深める事で、新たな知見を見出し研究をさらに飛躍させる事を目的とした。また、本国際会議への参加を通して海外の研究者と交流を深め、今後世界を舞台に活躍するために必要なコミュニケーション能力などを学ぶ事を目的とした。
本国際会議では新たな材料を用いた腰椎固定用インプラントの研究結果について発表した。ヘルニアなどの治療に用いられる本インプラントは、従来剛性の高いTi合金により構成され、ストレスシールディングによる骨治癒の遅延が問題となっている。また、スペーサー内に自家骨を移植する必要があり、骨採取による合併症も問題となっている。ここで、生体適合性を有する樹脂であるPEEK (polyetheretherketone) および骨導入性が確認されているPVF (polyvinylformal) スポンジをインプラントの構成材料として用いる事を提案している。インプラントの構成材料にTi合金と比較して剛性の低いPEEKを用いる事で骨治癒に必要な適切な力学刺激を椎体間へ付与し、骨の治癒速度の増加が期待される。また、 PVFスポンジを移植骨の代わりに挿入する事で、自家骨の採取が不要となり骨採取部の合併症問題を解決する事ができる。本国際会議での研究発表では、PEEK製のインプラントの力学試験およびFEM解析による力学特性の評価結果と、動物実験によるFEVスポンジの骨導入性の評価結果を発表した。
研究発表ポスター
本国際会議には医学系の研究者が多く参加しており、研究発表を通してインプラントを使う側の意見を聞く事ができ、これまでとは異なる知見を得る事ができた。また、私の研究している材料であるPEEKを腰椎固定用インプラントではなく、他のインプラントに適応している研究発表を聞く事ができ、新たなPEEKの可能性について知る事ができた。
初めての英語による研究発表だったが、自分の考えを正確に伝えることができず、自分の英語力の無さを身をもって痛感し、日々の英語学習への決意を新たにした。
最後に、今回の国際会議の参加に際して多大な援助を賜りました一般財団法人丸文財団に深く感謝いたします。