今年で5回目を迎える国際会議METAは、メタマテリアル、フォトニック結晶、プラズモニクス等のナノ光学・応用光学に特化した会議である。これらの分野での本会議の認知度は非常に高く、世界各国でこれらの分野を牽引する数多くの研究者が毎年参加する。今年も新進気鋭の若手研究者からセンター長クラスの研究者まで、多くの研究者が参加した。
今年の開催地は、シンガポールの南洋理工大学である。アジアで開催されたにも関わらず、アジア諸国からの参加者はおそらく3-4割程度で、あとはアメリカやヨーロッパからの参加者であった。これまで主にアメリカで開催されたナノ光学関係の学会にいくつか参加してきたが、その中で今回は日本人の参加者が今まで多い印象を受けた。
今回の講演では、金属でできた二種類の平面集光レンズの作製およびその光学特性について報告した。通常レンズはガラス等の誘電体でできているが、我々は金属薄膜に同心円状に多数のナノ構造を加工した。作製した2つのレンズのうち、一方はナノ導波路の伝搬モードを、もう一方はナノアンテナの散乱位相を利用することにより、入射される平面波の透過光に位相差に与え、光を集光することができるように設計した。作製した2つのレンズは青色から赤色までの可視光を集光することができ、ブロードに動作する。今回開発した2つのレンズはどちらも厚さが400nmと波長より薄く、光学系の大幅な省スペース化を実現する。また誘電体でできた凸レンズとは異なり平面構造をしていることは、作製する上で有利である。
講演後の質疑応答では、レンズの透過率が議論の対象になった。金属を使用しているため、今回のレンズは誘電体レンズより透過率は劣るが、構造の最適化で現状より透過率を向上させることは可能である。
なお、今回の講演は2013年にNano LettersとNature Publishing GroupのLight: Science and Applicationsに論文発表した内容に基づいた招待講演である。
S. Ishii, V. M. Shalaev and A. V. Kildishev, “Holey-Metal Lenses: Sieving Single Modes with Proper Phases,” Nano Lett. 13, 159-163 (2013).
X. Ni, S. Ishii, A. V. Kildishev and V. M. Shalaev, “Ultra-thin, planar, Babinet-inverted plasmonic metalenses,” Light: Science and Applications, 2, e72 (2013).
本会議の魅力は、半数以上の講演が基調講演や招待講演だったせいもあり、ホットなトピックを効率よく聞くことができた。またそのうちの何人かとは、実際に話をすることができた。
個人的にうれしかったこととしては、学位取得のために留学していた研究室の指導教員(米国Purdue大学Shalaev特別教授)や先輩と再会できたことである。当時のポスドクを含めると、5人も集まった。それぞれ世界各国で活躍しており、刺激を受けた。また彼らのように気心の知れた仲間と話すと、各国の研究環境や研究の傾向などなかなか表に出にくい情報を得ることができて貴重である。
最後に、本会議への参加をご支援くださった丸文財団に厚く感謝申し上げたい。