国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

平成25年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
辻 芳樹
(名古屋工業大学 大学院工学研究科)
会議名
4th Asian Conference on Coordination Chemistry (ACCC4)
期日
2013年11月4日~7日
開催地
International Convention Center, Jeju, Korea

1. 国際会議の概要

会場入り口

Asian Conference on Coordination Chemistry (ACCC4)はアジアを中心に21か国・地域が参加する錯体化学に関する会議であり、錯体化学を通じてアジア地域の交流を活性化することを目的としている。本会議は11月4日から7日にかけて韓国の済州島にあるInternational Convention Centerで開催され、131件の講演と193件のポスター発表が行われた。この会議では、錯体化学をはじめ、生物無機化学・生体材料化学・超分子化学・表面化学・触媒化学など、基礎から応用まで様々な化学的分野の内容に関する最新の報告とそれに関する議論が行われた。次会議は2年後の2015年7月12日から15日に香港で開催される。

2. 研究テーマと討論内容

ポスターセッションの様子

生体系では酵素が基質の酸化を行う際、高原子価の金属オキソ種(M=O)がその活性中間体として重要な役割を担っている。その例として我々の体内に存在する酵素で、αケト酸要求性酵素の一つであるTauDは、その活性中心に歪んだ配位環境を有する非ヘム鉄中心があり、酸化活性種として鉄(IV)オキソ種が生成することが知られている。一方、高等植物が光合成を行う際の酸素発生中心(OEC)では、マンガンカルシウムクラスター構造が活性部位として働いていることが、近年明らかとなっている。その構造は歪みを持ったある種のキュバン型であり、高原子価のマンガンオキソ種が水の酸化に関与していると考えられる。したがって、これらのマンガン活性中心を模倣したマンガン錯体を合成し、酸化触媒として応用することが戦略的に重要であるが、これまで構造に歪みをもつマンガン錯体の酸化触媒反応系の告例はほとんどない。そこで我々は、このような歪んだ配位環境を有するマンガン錯体の系で、酸化活性種である高原子価の金属オキソ種を生成することを試みた。本学会では「Formation of the Oxidative Intermediate Species in a Distorted Manganese(II) Complex System」というタイトルでポスター発表を行った。この会場には本研究と関連した金属オキソ種を研究する参加者も多く、活発な議論を交わすことができ大変有意義であった。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

バンケットの様子

初めての海外での国際会議であったため、発表する上で、言語の壁に対する不安があった。実際の発表の際には、英語でのコミュニケーションが必須であり、苦戦を強いられた。しかし、発表の内容と、自身が必死に伝えようとする姿勢が伝わり、議論した相手の方からも理解するための積極的なアプローチが得られた。それにより内容の発表と意見交換に成功し、英語に対する自信が生まれた。発表では本研究に興味をもった参加者が集まり、そこで意見交換することで、この分野での研究者と大いに交流を深めることができた。発表後も同じ訪問者が再度現れ、更に熱いディスカッションを行うこともあった。また講演会場では、世界的に著名な研究者の最新の報告を直接聞くことができたので、多くの情報が得られるとともに、非常に大きな刺激も受けた。

最後に今回の国際会議への参加にあたり、多大なる支援をいただきました貴財団に心より御礼申し上げます。

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