The 12th International Conference on Quasicrystals (ICQ-12)は、3-4年に一度開催される準結晶に関する国際会議で、日本を始めとして、アメリカ、ヨーロッパ、アジアの各国から多くの研究者が集まり、最新の研究成果が報告される。本会は、ポーランドのクラクフにあるAGH University of Science and Technologyにて、9/1-9/6の日程で開催された。本国際会議中に、準結晶の発見に関して、2011年ノーベル化学賞を受賞したProf. Dan Schechtmanの特別講演が開催され、多くの聴衆が参加した。
講演は、招待講演、一般講演、ポスター講演からなり、講演内容は、準結晶や関連物質に関する新物質合成、電気特性、磁気物性、及び触媒特性、熱電特性等、多岐にわたっていた。特に、準結晶における「量子臨界状態」の発見は、大きな成果である。さらに、最近は、金属材料だけでなく、高分子などでも発見されており、分野の拡がりを見せている。
今後、更に様々な分野の研究者がコラボレーションすることにより、これまでにない新しい物性が見出されることが期待される。
本研究テーマは、フェルミ準位近傍に擬ギャップを形成する物質群の熱電変換材料としての応用に関するもので、対象物質は、アルミ系準結晶の派生結晶である、AlReSi(近似)結晶である。この材料の有する特異な電気物性の起源を、以下の観点から明らかにした。
(1)に関しては、放電プラズマ焼結法を用い、ポーラスな組織を大幅に改善させることに成功し、電気抵抗率は大幅に低減したが、その温度依存性に変化がないことを確認した。次に、(2)空孔濃度と(3)化学結合性の観点から議論を行った。低速陽電子ビーム測定を用いて、空孔濃度の違いを、最大エントロピー(MEM)法により、化学結合性を明らかにした。AlReSi結晶は、準結晶に匹敵する高い熱電特性を有するため、今後、物性起源の解明が更なる熱電性能向上につながると期待される。
本国際会議に参加して、最新の準結晶及び関連物質についての情報を得ることができた。発表者は、“1/1-AlReSi approximant crystal: Electric properties, vacancy concentration and chemical bonding”という題目でポスター発表を行った。多く方々から、発表内容に興味を持っていていただき、有意義なディスカッションができた。興味を持っていただいた研究者の方々からは、試料提供のご依頼があり、国際共同研究を始める機会を得ることができた。
その他には、私が興味を持っている、KKR-CPA法という計算手法を用いた、熱電変換材料の特性予測を行っている、AGH University of Science and Technologyの研究室に直接訪問させていただく機会を得て、計算の有用性と問題点に関してディスカッションした。今後、共同研究を進めていきたいと考えている。海外の研究者とコミュニケーションを積極的に行い、国際共同研究を始める機会に恵まれたという点でも、本国際会議に参加した意義は大きい。
本学会に関する渡航援助をしていただいた丸文財団様に厚く御礼申し上げます。