本国際会議はEuropean Materials Research Society (会員数約3,200人)によって開かれる大規模な材料会議の一つであります。本会議は毎年、春と秋にヨーロッパ圏内で開催されています。幅広い分野の材料科学の国際会議であり、様々な分野の研究者が研究所、企業を含め多く参加しています。また、国内外の企業もスポンサーとして多く参加し、大型装置などの実験用製品の展示会を開催していました。今春は25のセッションに分かれて行われ、最新の研究成果が発表、議論されていました。私はシンポジウム“Advanced inorganic materials and structures for photovoltaics”に参加しました。
私は“Colloidal silicon nanocrystals with inorganic ligands”という研究テーマで15分間の口頭発表を行いました。
近年、半導体ナノ結晶が溶液中に均一に分散したコロイドは、塗布プロセスにより容易に大面積電子デバイスを作製できることから盛んに研究が行われています。しかし、半導体ナノ結晶は溶液中で容易に凝集してしまうため、一般には半導体ナノ結晶の表面を有機分子で修飾することによりコロイドを得ます。しかしながら、それらは長期安定性に乏しく、塗布後の薄膜の電気伝導特性に影響を与えます。本研究では無機元素をシリコンナノ結晶に高濃度ドーピングすることにより、有機分子表面修飾無しで極性溶媒中で長期間安定なコロイドの作製に成功しました。さらに作製したシリコンナノ結晶の詳細な物性研究から、その構造や分散性の起源についても報告しました。
発表後、複数の研究グループの研究者から、基礎物性に関わる質問を受け、今後の研究に向けた議論を行うことができました。
E-MRS 2013 SPRING MEETINGに参加し、電子デバイス分野の発表報告を聞き、また同時に自らの研究発表をできたことは非常に有意義な経験でした。また、基調講演では輝かしい業績を築かれた先生方の発表を聞き、感銘を受けました。
自身の研究発表についても、様々な研究分野の研究者から高い評価をいただけたのは非常に励みになりました。特に、本研究成果が認められ、”Graduate Student Award”をいただくことができたのは今後の研究を行なっていくうえで大きな自信になります。
学会が開催されたストラスブールはヨーロッパの中心都市のひとつであり、文化を学んだり、価値観の異なる人たちと接し、国際感覚養成に非常に良い場所であったと思います。
最後に、これらのすばらしい体験をするにあたり、多大なご支援をいただきました丸文財団様に深く感謝申し上げます。