フェリーの写真
対岸からの会場の写真
The Sixth Annual World Molecular Imaging Congressは、分子イメージング分野における世界最大規模の国際会議である。本会議は北米、欧州、アジアの各国の分子イメージング学会から関連研究者が集まり、参加者は毎回2,000名を超える。今回は第六回目で、米国ジョージア州サバンナで開催された。私は発光イメージング法に関係する技術、材料の研究について発表を行った。
本会ではPET、MRI、放射線画像、X線顕微鏡法、発光・蛍光イメージング法、光学顕微鏡法、分子標識法、それらのハードウェア、またソフトウェア、ヒト・動物・細胞への応用など、様々な分野の一流研究者が一同に介し、活発に議論を行っていた。本会議ではPET、MRI等の臨床診断技術の開発から発光や蛍光イメージング法での基礎医学発展のための研究ツール開発という、いわゆる基礎と応用が入り混じった学会であった。どちらかと言うと、臨床を目指す研究の占める割合は高く応用志向の強い学会であった。
また会場のThe Savannah International Trade and Convention CenterはSavannah Riverを挟んで、Downtownの対岸に位置しており、毎朝フェリーに乗って会場に移動するという貴重な体験をすることができた。
残念な事に参加者に日本人研究者は非常に少なく、私が聞いた日本人の講演は二名のみという現状であった。分子イメージング技術は世界的にもその技術開発、進展の重要度が極めて高いとされている分野であり、この日本人参加者の少なさは残念であった。
本発表ではホタル生物発光を活用した近赤外発光材料の開発とin vivoイメージングへの応用に関する発表を行った。次のような題目『Inspiring Performance of the Designed Firefly Luciferin Analog Emitting Near Infrared Biological Window Light』で発表を行った。
生物発光イメージング法はマウス等を用いた個体レベルのin vivoイメージングにおいて、蛍光タンパク質や蛍光色素等を用いる蛍光イメージング法と比べ深部の観察ににおいて言われている。またこれらの光イメージング法はPET等の放射性物質を用いるイメージングと違い設備、装置が簡便であるため、近年急速に普及している。
一方でその生物発光イメージング法で用いられる各種の生物発光は目に見える青から赤の光しか発する事ができない事が問題であった。理由は目に見える光は生体組織(血液、肉)による強い吸収と散乱により、その光は生体組織による妨害によりイメージングを行うのは困難なためである。
このため、生体透過性の高い近赤外領域で発光する生物発光材料の開発が望まれていた。
本会議では我々が開発した世界初の近赤外発光ルシフェリンを使うことで従来のD-ルシフェリンに比べマウス体内からの光を10倍近く感度良く発光を観測することに成功したという内容で発表を行った。
本会議はin vivo光イメージングを専門とする研究者が多く、たくさんの方々と討論することができた。中でもin vivo光イメージング装置の世界的なシェアを持つパーキンエルマー社の研究者には開発者視点での極めて有益な意見をいただくことができた。
ポスター発表の様子
米国ジョージア州サバンナという学会でもなければなかなか訪れる機会のない場所ではあったが、参加者数は多く街全体を賑わせていた。街全体としては、観光名所というものは無かったが、歴史を感じられる町並み、公園も多く楽しく観光もすることができた。
会議ではPET、MRIプローブやPET、MRIを用いた臨床診断技術の開発等が盛んになされていた。また、CT、PET、光等のいくつかのイメージング技術を組み合わせたマルチモーダルなイメージング技術の開発、応用が多く発表されており、著名な方々の最先端研究について学ぶことができた。一方で、光イメージング技術の開発としては、やはり蛍光を使ったものが多く、生物発光イメージングを使った発表は少なかった。
私のポスター発表にはたくさんの方と数人のin vivo発光イメージングに非常に詳しいと思われる方が来てくださった。これらの方々と討論することができ、英語能力の不足感は否めなかったが、非常に有意義なコメント、厳しい質問等をいただけることができ、今後の研究の方向性を考えるいい機会となった。
最後に、国際会議参加にあたり、多大なご支援を賜りました貴財団に心より感謝申し上げます。