ダラスの町並み
International Joint Workshop on Neural Networks (IJCNN)はニューラルネットワークを扱った最大規模かつ権威ある国際会議です。IJCNNは1987年に初めて開催され、今年で26回目の開催となりました。本会議は、毎年開催されるニューラルネットワークの基礎からその応用に至るまで幅広く取り上げられます。また、偶数年はWorld Congress on Computational Intelligence (IEEE WCCI)として関連の深い3つ国際会議と合同で開催され、奇数年はIJCNN単独で開催されます。2013年の本年は、IJCNN単独での開催であり、非常にニューラルネットワークに特化した会議となりました。IJCNNは、ニューラルネットワークに関する研究が盛んな北米中心に開催されます。今回は、アメリカ合衆国のダラスにて8月4日から9日まで開催されました。今回の会議には、29のニューラルネットワークのトピックスが取り上げられ、計473件の研究発表が行われました。次回のIJCNNは、偶数年となるため3つの国際会議が合同での開催となります。WCCI2014は、2014年の7月6日から7月1日まで、中国の北京にて開催される予定です。
発表の様子
本研究では、人工グリアニューラルネットワークの提案を行いました。脳には、ニューロンとグリアと呼ばれる2種類の神経細胞が存在しています。ニューロンは、電気信号による情報伝達が古くから知られており、その重要性から様々な研究が行われてきました。対して、グリアは、ニューロンの補助的細胞だと考えられており、研究がほとんど行われてきませんでした。しかし、近年、グリアがイオン濃度を用いた情報伝達を行っており、脳の高次情報処理に重要な働きをしていることがわかってきました。そこで、本研究では、グリアの情報伝達機能を人工ニューラルネットワークに組み込んだ人工グリアニューラルネットワークを提案しました。このネットワークでは、グリアが複数のニューロンと結合しておりグループを形成しています。このグリアが結合したニューロンの出力を受け取り、一定のしきい値を超えた時に発火します。発火したグリアは、ニューロンにパルスを注入し、このパルスは、ニューロンの発火に作用します。このように、今回提案した人工グリアニューラルネットワークは、互いに入出力でつながっています。本研究では、このグリアとニューロンが互いに影響しあうことにより、ネットワークの情報処理能力が向上することを示しました。
質疑応答では、提案したネットワークの詳細な働きについて質問を受けました。スライドを用いて返答しましたが、十分に時間が取れなかったため、セッション終了後に改めて回答し、理解してもらうことができました。
IJCNN'13に参加し、多くの研究者と討論を交わすことができました。本国際会議は、私が行っている研究分野において最も重要な会議です。そのため、他の参加者の方々にも研究内容が理解されやすく、様々な意見を頂戴することができました。さらに、同じ分野の一線で活躍されている研究者の方々の研究を聴講することができました。今回の会議では、ニューラルネットワークの実装に関する研究が多く見受けられました。ニューラルネットワークの研究は、シミュレーションから実際に回路上に創造する段階に移ってきているように感じました。今後、私が研究を発展していく中で、提案手法の実装も視野に研究を遂行していかなければならないと強く感じました。普段の研究生活では、自身の研究に没頭するあまり、研究が先細りになりがちです。今回の国際会議は、自身の研究分野のトレンドについて知ることができ、さらに、どのように研究を発展させていくと良いのか学ぶ良い機会となりました。また、バンケット等のイベントにおいては、研究だけでなくそれぞれの国の文化や生活、あるいは研究への取り組みなど多くのことを学ぶことができました。さらに、このようなコミュニケーションにおいて改めて英語の重要性を実感いたしました。この経験を活かし、英語によるコミュニケーション能力の向上にも力を入れていきたいと思います。
最後になりましたが、この国際会議への参加に際し、多大なるご支援をして下さった一般財団法人丸文財団に、心より感謝申し上げます。