会場入り口にて台湾人の学生と
SPIE Optics + Photonics
本会議は、1955年に設立した、光学、フォトニクス、画像工学の国際的な発展を目的とした、SPIEの主催する、知識の交換、情報収集、発表のための世界最大級の国際会議です。特に、今回私が参加したセッションは、物質の構造や、物性をナノスケールで観察するための、イメージングや、分光に関する新たな手法に関する意見交換を目的としており、本研究を発表するのに絶好の場だと言えます。今回の、このような世界規模の国際会議に参加することで、そこで得た刺激や、国際感覚、他の研究者からのフィードバックを自らの研究生活に活かし、今後の、新たなアプリケーションや装置づくりに繋げるものと期待しています。
リーダーシップワークショップの様子
SPIE Optics + Photonics Leadership Workshop
また、今回の会議への参加は、研究発表、情報収集だけではなく、本会議に先立って開催される、Optics + Photonics 2013 Student Chapter Leadership Workshopにも参加をしました。各国のSPIEの学生チャプターが集まり、それぞれの研究はもちろん、チャプターとしての社会活動を発表し、意見交換を行う場です。今回は全42カ国中、37カ国の学生チャプターから200人以上が参加しました。
■ 研究テーマ:
3D dynamic imaging of intracellular molecules by surface enhanced Raman scattering
■ 討論内容:
私は本会議において、 表面増強ラマン散乱(SERS)を用いた細胞内分子の3次元イメージングの手法を報告しました。ラマン散乱は分子と光の相互作用である散乱過程のひとつで、構造に起因する振動情報を示します。ラマン散乱は可視光を用いて誘起することが可能であるため、生体への利用も盛んに行われています。応用例のひとつとして、生きた細胞のイメージングがあります。生体分子を生きたまま無標識で観ることができるので、サンプルに優しい観察法として注目されています。
私は、金属ナノ粒子近傍において形成される近接場付近で局所的に増強されたラマン散乱(表面増強ラマン散乱)が観察されることを利用しました。表面増強ラマン散乱を誘発するために、金のナノ粒子を細胞の中に導入しました。こうすることで、金ナノ粒子の近傍からのみ高い空間選択性で、高感度に表面増強ラマン散乱を観察することが可能です。実際に表面増強ラマン散乱が観察される領域は、金ナノ粒子表面から十数ナノメートルと言われており、その領域に存在する分子を単分子レベルでの検出が可能です。導入された金ナノ粒子は細胞内輸送経路に乗るか、細胞内物質の拡散による力を受け、3次元的に動きます。私はこの動きと共に変化する金ナノ粒子近傍の表面増強ラマン散乱を観察できないかと考えました。
そこで、一つの金ナノ粒子の動きを3次元空間で追跡しながら、同時にその金ナノ粒子近傍から表面増強ラマン散乱を同時に観察するための観察系を構築しました。金ナノ粒子の位置と、動きに関わる金ナノ粒子のラマン散乱を同時に観察することで、細胞内輸送の様子とそれと同時に関わる生体分子のダイナミクスの観察を100msec/フレームで可能にしました。
6日間におよぶ国際会議に出席し、発表後の質疑応答、会議の合間の休憩時間なども多くの研究者と意見を交換しました。プラズモニクスの発表に関するセッションを中心に参加をし、世界の著名な研究者の発表から大いなる刺激を受けました。
一方で、自分の研究発表の後には発表後も直接私を訪ねてきて議論を交わすこともできました。世界の研究の今を知るとともに、自身の研究も決して負けているわけではないということを実感でき、今後の研究生活に大きな自信を持って臨むことができると思います。
また、SPIE Optics + Photonics に先立って開催されたSPIE Optics + Photonics Leadership Workshopでは、世界37カ国から200人以上のSPIEの学生チャプターが参加しリーダーシップに関して意見を交換しました。私も、同伴の大阪大学の学生チャプター4人のうちのひとりとして参加し、提示された議論はもちろん、お互いの研究内容や、チャプターの活動の相談などを行い、1日ではありましたが、非常に有意義な時間を過ごせました。
リーダーシップワークショップに参加した学生