SPIE Photonics Westはアメリカ・サンフランシスコにて毎年1月に開催される光学に関する世界最大級の国際会議であり、世界中の光学に関連した研究者・技術者が一堂に会する。Moscone centerというAppleの株主総会等も行われるような巨大な会場の3棟全てを貸し切り、企業・学術機関の垣根を越えて活発な発表と議論が展開されている。
本会議はLASE(レーザー関係)、BIOS(バイオ関係)、Quantum West(量子関係)等複数の分野に分かれており、私はLASEに参加した。
“Dynamics of deep-ultraviolet-light-induced absorption in CsLiB6O10 under focusing conditions”というタイトルの口頭発表を行った。内容は、深紫外光(DUV)発生において重要な構成要素である非線形光学結晶・CsLiB6O10について、その紫外光による劣化を定量的に評価したものである。従来よりも低コスト・簡便な評価手法を開発し、その実証を行った結果を報告した。また、これまでに定量評価されてこなかった紫外光吸収の増加を定量評価し、新たなメカニズムの理解を前進させたことについても報告した。私の発表したセッションは波長変換による紫外光発生をメインのテーマとしており、同様の研究をしているであろう聴衆の方々から4件ほどの質問をいただいた。内容は本手法の正確性や応用可能性を深く問うものであり、今後の研究方針にも繋がる議論が展開できたと考えている。
本会議はその規模感が凄まじく、至るところで驚かされた。企業ブースは見渡しきれないほど広く、無料でTシャツを配っていたり、アーケードゲームを設置していたりと国内会議では見たことのない催しが多く見られた。AR・VRのコーナーは、自分の研究分野から離れているとはいえ、高精度のARグラスや超微小ディスプレイなどを体験でき、SF映画の世界が目前に迫っていることを感じさせられた。会議専用のアプリの存在も良かった。参加者が首にかけているQRコードをアプリでスキャンすれば、その参加者の所属や発表日時が表示される。UIが大変優れており、とても一会議用のものとは思えないクオリティのアプリであった。ポスター発表で酒類が飲み放題であることも初めての経験で、アルコールのおかげで海外の発表者との会話も気持ちばかり円滑に進んだような気がしている。また、会議自体とは関係ないものの、市内の移動に使った無人タクシーのWaymoも衝撃であった。市内を数多く走っており、アプリで呼べばすぐに近くまで来て、降りた後もすぐに去っていく。車線変更も駐停車もお手のものであり、多分私より運転が上手かった。世界のテクノロジーの集積地であるシリコンバレーのおひざ元にあるサンフランシスコという都市の、テクノロジーの導入ハードルの低さを感じさせられたのがこの自動運転であった。会議での世界中の研究者・技術者との交流、サンフランシスコというテクノロジーの先端を行く都市の体験は、大変に有意義な経験であったと考えている。改めて、助成をいただいた丸文財団に感謝申し上げたい。
