国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和7年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
西村 壮真
(大阪大学 大学院工学研究科 ビジネスエンジニアリング専攻)
会議名
The 6th International Conference Hybrid Materials and Structures (Hybrid 2025)
期日
2025年4月9日~10日
開催地
Space Expo, Noordwijk, The Netherlands

1. 国際会議の概要

ドイツ材料学会(DGM)が主催する国際会議「HYBRID2025」に参加し、口頭発表を行いました。本会議は、材料のハイブリッド化に関する国際的な学術会議であり、最先端の研究成果から航空宇宙産業への応用を見据えた実用的な発表まで、幅広い内容が紹介されました。

会議では、オランダで先駆的に研究開発され、航空機に実用化されたファイバーメタルラミネート(FML)に関する基調講演が行われました。講演は、エアバス社にてFMLの開発に貢献した研究者によって行われ、金属と繊維強化プラスチックを積層したこの構造材料が、研究室から航空機産業へと展開された経緯を、技術的・歴史的観点の両面から振り返る非常に示唆に富んだ内容でした。

また、会議チェアを務めた研究者が先駆者として知られる、熱硬化性複合材料と熱可塑性複合材料のハイブリッド化に関するスペシャルセッションも開催され、本分野の最新の研究成果が集中的に発表されました。

参加者はドイツ、オーストリア、ポーランド、オランダなどヨーロッパ各国の研究者が中心であり、日本からの参加は私が所属する研究グループのみでした。日本の研究成果を国際的に発信する貴重な機会となりました。

最終日には、欧州宇宙研究技術センター(ESTEC)の見学ツアーも実施され、会期を通じてハイブリッド材料や軽量化技術について多くの専門家と深い議論を交わすことができました。

2. 研究テーマと討論内容

本発表では、「Evaluation on Ultrasonic Welding Behavior for CF/Epoxy and CF/PEEK Using CNT/PEI Coupling Layer」という題目で、異なる性質を持つ熱硬化性および熱可塑性CFRPを組み合わせたハイブリッド接合技術について報告を行いました。

熱可塑性CFRPと熱硬化性CFRPの接合は、材料特性や成形プロセスの違いにより一般的に困難とされていますが、熱可塑性樹脂であるポリエーテルイミド(PEI)を界面に挿入することで、熱硬化性CFRP(エポキシ樹脂系)と熱可塑性CFRP(PEEK樹脂系)との接合が可能であることが、先行研究より明らかとなっています。

これまでに、熱可塑性CFRP角棒と同種のCFRTP積層板を超音波融着接合することで、スキン-リブ構造の迅速な製造手法を提案してきました。しかし、同種材料同士の接合では被着材の溶融・変形が課題となっていました。本研究では、熱硬化性CFRPを母材とし、PEEK製の角棒で補強するハイブリッド接合を採用することで、母材の変形を抑制しつつ高強度接合を実現する新たな接合プロセスを提案しました。さらに、接合界面にPEI層を介在させることで靭性が付与され、耐衝撃性や疲労特性の向上も期待できることから、本手法は構造健全性の面でも有利であると考えられます。

さらに、PEI層にカーボンナノチューブ(CNT)を添加することで導電性を持たせ、超音波接合後の接合部の電気抵抗変化を測定することで、構造健全性のモニタリング機能の可能性についても評価を行いました。CNTを0.5 wt%添加したPEI層を用いた接合体では、最も高い接合強度と明瞭な抵抗変化が観測され、接合部の損傷予兆の検出が可能であることが示唆されました。

これらの成果は、ハイブリッドCFRP構造の製造自由度を高めるとともに、構造安全性の向上にも資するものであり、今後の航空・輸送分野での応用展開が期待されます。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

会期中、コーヒーブレイクの場において、研究分野の技術に精通するドイツの研究者と個別に意見交換を行いました。特に、2026年度に予定している同研究室への研究留学について、受け入れ体制や実施予定の研究テーマに関して詳細な議論を行うことができました。自身の今後の研究展開や、国際共同研究の具体化に向けた大きな一歩となる非常に貴重な時間となりました。

また、本会議では欧州の主要研究機関の最新の研究動向に触れるとともに、自身の研究を専門外の参加者にもわかりやすく説明するスキルを磨く機会ともなりました。質疑応答では、材料選定や応用展開に関して示唆に富んだコメントを多数いただき、今後の研究方針を見直す良い機会ともなりました。

最後に、今回の国際会議参加に際し、多大なるご支援を賜りました貴財団に心より感謝申し上げます。現地での学びと出会いを糧に、研究をさらに深化させ、今後に生かす所存です。


※写真は全て会議ウェブサイト(https://dgm.de/hybrid/2025/picture-gallery)より引用

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