国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和7年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
眞野 幸希
(名古屋大学)
会議名
SPIE Photonics West
期日
2026年1月17日~22日
開催地
San Francisco, California, USA

1. 国際会議の概要


学会会場にて

SPIE Photonics Westは国際光工学会(SPIE)が毎年開催する光学分野最大規模の国際会議である。今年度は、サンフランシスコのMoscone Centerにて、2026年1月17日から1月22日の期間に実施された。本学会ではレーザ、生物医学光学、バイオフォトニクス、量子、光エレクトロニクスを含む光工学に関する幅広い討議内容について最新の研究成果が公表された。今年は6分野のセッションで約4,200件の発表が行われ、研究者同士の活発な議論が行われた。また、併催されるSPIE Photonics West Exhibitionsは1,600以上の企業が参加する世界最大級のものであった。

次回はサンフランシスコにて2027年1月30日から2月4日まで行われる。

2. 研究テーマと討論内容

本会議では、データセンタ向けの光スイッチに関する口頭発表を行った。

生成AIをはじめとする大規模AIアプリケーションの急速な普及により、データセンタの通信トラフィックは今後数年で数倍規模の増加が見込まれている。これに対応するため、従来の電気スイッチに代えて低消費電力かつ広帯域な光スイッチを中核とするネットワークアーキテクチャが注目されている。本アーキテクチャでは多ポートかつ高スループットな光スイッチが不可欠であり、なかでも空間スイッチと波長ルーティングスイッチを組み合わせた光スイッチアーキテクチャが有力視されている。しかし、既存研究の多くは高コストなコヒーレント方式の光送受信器を前提としている。現行のデータセンタにおいて広く利用される強度変調直接検波(IM/DD)方式の送受信器をこの種の光スイッチに適用すると、光ファイバ伝搬で生じる波長分散により受信信号に波長依存の位相歪みが発生し、高速IM/DD信号では信号品質が著しく劣化する。波長分散が少ないO帯での運用も検討されているが、実用的な光増幅器が乏しく、大規模化には限界がある。本発表では、IM/DD方式の送受信器の利用と光スイッチの大規模化を両立する新しいスイッチ構成法を提案した。スイッチ内部で複数波長の信号が集約される箇所に波長分散補償器を設置し、単一点で複数信号の分散を一括補償することで、コスト効率に優れた分散補償を実現した。シミュレーションにより、128-GbaudのOOK信号を用いた場合には2,048ポート、64-GbaudのPAM4信号を用いた場合には1,024ポートの大規模光スイッチが実現可能であることを確認した。本発表を通じた討論では、提案手法により分散の制限が取り除かれることで、ポート数の上限がスイッチ内の挿入損失やクロストークといった他の要因が支配的になることについて議論が交わされた。


学会発表の様子

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

自身にとって初の国際会議における口頭発表であったが、事前準備を入念に重ねた結果、発表を円滑に遂行することができた。質疑応答を通じて、その場で研究内容を再構成し、要点を明確化した上で議論を展開する重要性を改めて認識した。世界的な大学や企業から集った第一線の研究者と同一の場で発表を行った経験は大きな刺激となり、自身の研究を国際的な水準の中で相対的に位置づける視点を得ることができた。さらに、研究背景や問題意識の異なる研究者に対しても、研究の意義や新規性を共有可能な形で提示することの重要性を学んだ。


ノースカロライナ大学にて

本会議での発表後には、ノースカロライナ州立大学のShih-Chun Lin准教授の研究室に滞在し、共同研究を実施した。本共同研究は、自身が取り組む光スイッチ技術をデータセンタ内通信からデータセンタ間の広域通信へと拡張するための知見獲得を目的としたものである。同研究室におけるネットワーク制御手法に加え、運用設計や資源管理に関する研究に触れ、議論を重ねたことで、広域ネットワークを跨ぐデータセンタ間通信を見据えた光スイッチ研究の方向性を明確化することができた。さらに、同研究室の博士後期課程学生が、高い責任感のもと主体的に研究に取り組み、指導教員と細かく議論を重ねながら研究を深化させていく姿勢は非常に印象的であり、今後の研究活動において、大いに参考にしたいと考えている。

現在は、今回の滞在で得られた知見に基づき、広域通信における性能要件および運用制約を踏まえた技術課題の整理とシステム要件の明確化を進めている。今後は、本成果を基盤として研究を発展させ、国際会議への論文投稿を目指していく。本会議における発表経験や最新技術からの知見、ならびに共同研究を通じて得られた新たな研究構想は、今後の研究活動を一層推進するための重要な基盤となると考えている。

最後に、本国際会議への参加および共同研究の実施に際し、貴財団より多大なるご支援を賜りましたこと、心より御礼申し上げます。

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