SPIE Photonics Westは、San Franciscoにて開催される、光学・フォトニクス分野における世界最大級の国際会議の一つである。国際光工学会であるSPIEが主催しており、例年1月から2月にかけて開催される。世界中から研究者、技術者、企業関係者が参加する大規模な学術イベントである。
本会議は、AR | VR | MR、BiOS(生物医学光学)、LASE(レーザー技術)、OPTO(光エレクトロニクス)、Quantum West(量子技術)など、複数の専門領域から構成されている。2026年は20,000人を超える研究者・技術者が参加し、4,200件以上のプレゼンテーションが行われた。また、企業展示(エキシビション)も併設されており、1,500社以上が出展していた。展示会場では最新の光学機器やデバイスの実機展示およびデモンストレーションが行われており、学術研究と産業応用の密接な連携を実感できる点が本会議の大きな特徴である。
私は、本会議内のBiOS領域における「Photonic Diagnosis, Monitoring, Prevention, and Treatment of Infections and Inflammatory Diseases 2026」というポスターセッションに参加した。本セッションでは、光技術を用いた感染症および炎症性疾患の診断・モニタリング・予防・治療に関する研究が統合的に扱われていた。特に、細菌・ウイルス感染症や炎症反応を伴う疾患を対象とした研究が多く、蛍光イメージングや分光分析、光治療など、多様なアプローチが報告されていた。医療応用を強く意識した基礎研究から臨床応用まで幅広い議論がなされており、本分野の重要性の高まりが示唆された。
写真は、会場に設置されたSPIEのモニュメントおよびポスターセッションの様子を示したものである。モニュメントは記念撮影スポットとなっており、多くの参加者が写真撮影を行っていた。また、ポスター会場では多数の参加者による活発な議論が行われており、会場全体が非常に活気に満ちた雰囲気であった。


私は、「Enhanced Bacterial Inactivation by Pulsed UVC Light is Accompanied by Increased Thymine Dimer Formation」というテーマでポスター発表を行った。
本研究は、UVCパルス照射によって細菌の不活化効果が増強される要因の解明を目的としたものである。UVC光による細菌不活化は、DNA上にチミン二量体が形成されることによってDNA複製が阻害される現象に基づいており、薬剤を使用しない殺菌手法として広く応用されている。これまでに、照射量を抑えつつ不活化効果を高める方法としてUVCパルス照射の有効性が報告されているが、そのメカニズムについては十分に明らかにされていない。
そこで本研究では、パルス照射によってチミン二量体形成量が増加するかどうか、さらにその増加がDNAと光の直接的な相互作用のみに依存するのか、あるいは細胞環境の影響を受けるのかを検討した。DNAモデルとしてプラスミドDNAを用い、プラスミドDNA溶液およびプラスミドDNAを導入した大腸菌懸濁液の2種類のサンプルを作製し、それぞれに対してUVC光の連続照射およびパルス照射を行った。チミン二量体形成量はイムノドットブロット法により評価した。
その結果、プラスミドDNA溶液では連続照射とパルス照射の間に有意差は認められなかった一方で、大腸菌懸濁液ではパルス照射により有意に多くのチミン二量体が形成された。これらの結果は、パルス照射による不活化効果の増強が光化学反応の変化に起因する可能性を示唆しており、その過程において細胞内の微小環境が重要な役割を果たしている可能性が示された。

ポスター発表における討論では、実験条件に関して有益な助言を得ることができた。特に、使用するプラスミドDNAの種類によって結果が影響を受ける可能性があるとの指摘があり、塩基配列の違いを考慮したサンプル設計の重要性について新たな視点を得た。このような検討を行うことで、イムノドットブロット法におけるバックグラウンドの低減や、結果の再現性および信頼性の向上につながる可能性が示された。
また、殺菌を専門とする研究者との議論では、本研究成果の社会実装に関する意見交換を行った。UVCパルス照射が実用的な殺菌技術として応用可能であるかという観点から多くの関心が寄せられ、本研究の応用可能性について有意義な示唆を得ることができた。
以上のように、本発表および討論を通じて、自身の研究に対する理解を深めるとともに、新たな課題および展望を明確にすることができた。
国際会議での研究発表は本会議で2回目であった。初めて参加した会議では、自身の研究内容を伝えることに精一杯であり、議論や国際交流という点においては課題と反省が残る結果であった。この経験を踏まえ、本会議に向けては英語での議論を意識した十分な準備を行った。
その結果、発表時には聴衆が求めている情報や質問の意図を的確に把握しながら対応することができ、納得のいくまで意見交換を行うことができた。初回の参加では得られなかった、国際的な研究者と議論することの意義や楽しさを実感する貴重な機会となった。
一方で、参加者の研究に対する視野の広さや着眼点には大きな刺激を受けた。事前に最新の研究動向を調査し、自身の研究の位置づけを意識して臨んだものの、応用可能性の広がりや実験条件の最適化、さらには今後の研究展開に関する提案など、想定を超える多くの示唆を得ることができた。これらの議論は、自身の研究に新たな視点をもたらすとともに、今後取り組むべき課題を明確にするものであった。
以上より、本会議への参加は、自身の研究能力および国際的なコミュニケーション能力の向上に大きく寄与する極めて有意義な経験であった。
最後に、本会議への参加にあたり、一般財団法人丸文財団より多大なるご支援を賜りましたこと、心より御礼申し上げます。参加した貴重な経験を大切に、今後の活動に活かしてまいります。
