国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

平成27年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
矢崎 雄馬
(東京大学 大学院新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻)
会議名
The 2015 American Control Conference (ACC2015)
期日
2015年7月1日~3日
開催地
Palmer House A Hilton Hotel, 17 E Monroe St, Chicago, IL, USA

a. 実施概要

a-1 : 国際会議名
The 2015 American Control Conference (ACC2015)

a-2 : 開催期間
2015/07/01 ~ 2015/07/03

a-3 : 開催場所
Palmer House A Hilton Hotel, 17 E Monroe St, Chicago, IL, USA
アメリカイリノイ州シカゴのヒルトンホテルにて行われた。
シカゴはビジネス街であり、会場周辺には高層ビルが立ち並んでいた。

a-4 : 会議の概要
American Automatic Control Council (AACC)が主催する毎年行われる国際会議である。ACCの前身であるJoint Automatic Control Conference (JACC)は1960~1981年まで開催され、1982年から現在に至るまでACCとして開催されている。JACCから数えると今回で、56回目を迎えており、制御工学に関する分野を中心に電気系の様々な分野のトピックを含む大きな学会である。
(参考)国際会議のオフィシャルサイト: http://acc2015.a2c2.org/

1日目~3日目(7/1~7/3)は、様々な分野にわたるセッションが行われた。3日間で約176のオーラルセッションが行われ、それぞれのセッションにおける発表は6件で、各20分であり、セッションの長さは120分である。私は自分の分野(モーションコントロールやメカトロニクス)に近いセッションを聴講した。

b. 具体的内容

b-1 : 参加セッション名
7/3 10:00から始まったFrA03 - Precision Mechatronics: Emerging Developmentsというセッションに参加した。
オーラルセッションで、使用言語は英語である。

b-2 : 論文概要とその評価
<論文題目>
Application of Mode Switching Control Using Initial State Variables in Constraint Final-State Control to High-Precision Dual Stage

<著者>
Yuma Yazaki, Hiroshi Fujimoto, Koichi Sakata, Atsushi Hara, Kazuaki Saiki

<概要>
本発表は、2,3世代先の半導体・液晶製造装置への適用を目的とする、粗微動間連結分離機構を有する精密位置決めステージの制御に関する研究である。半導体・液晶製造装置には、長距離を駆動させるための粗動部と短距離を精密に制御する微動部を組み合わせた2段アクチュエータ構造が用いられてきた。近年、製品の大型化及びスループット向上の要求により、半導体・液晶製造装置にも大型化、高速高精度化が求められている。しかし、装置が大きくなり、質量が増加すると装置の共振周波数は下がるため、フィードバックループを高帯域化できない。その結果、高速高精度な位置決め制御が難しくなってきている。以上の理由から、従来の半導体・液晶製造装置の構造では大型化と高速高精度化を両立できないため、その2つを両立できる新しい構造の半導体・液晶製造装置が求められている。

そこで本研究グループは、粗微動間連結分離機構を有する精密位置決めステージ(以下、カタパルトステージ)を試作した。従来のステージは粗動部を微動部の衝突を許さないため、微動部にも大推力、大質量のアクチュエータが必要であったが、カタパルトステージでは粗動部と微動部の衝突を許容することで、微動部には小推力かつ軽量なアクチュエータで十分である。その結果、ステージの共振周波数が上がり、フィードバックループを高帯域化できるため、高速高精度な位置決め制御ができるようになると考えられる。また、従来の常識として、半導体・液晶製造装置は精度を高めるためには粗動部にエアガイドとリニアモーターを使わなければならないというものがあったが、カタパルトステージの構造をとることによって、粗動部にはより安価な案内、駆動方式を用いることができる。カタパルトステージを半導体・液晶製造装置に適用することにより、半導体・液晶製造装置の価格を大幅に下げることができると期待される。

カタパルトステージの目標の一つは、微動ステージの必要最大推力を小さくすることにより微動ステージを軽量化し、フィードバックループを高帯域化することであるため、微動ステージの必要最大推力を事前に見積もることが設計上非常に重要である。本研究では微動ステージの必要最大推力を考慮しつつ、加速時に微動ステージの制御を開始するタイミングを定量的に評価する手法を提案し、実験によってその有効性を示した。

<受けた評価・得られた知見>
本セッションには半導体製造装置世界第1位のメーカーであるASMLの方々が多く参加しており、カタパルトステージの構造に関する質問を多く受けた。また提案手法の妥当性に関する質問もあったが、正確に答えることができたと思う。セッション終了後にASMLと共同研究を行っているOomen先生やMarcel先生に声をかけていただき、カタパルトステージだけでなく精密位置決めステージ全般のことについてお話しできたことは非常に貴重な経験となった。

c. 得られた効果

本学会ではASMLによる発表も多く、半導体製造装置に関する最新の研究動向を学ぶことができた。また私は今後の研究において制約条件を陽に考慮した制御手法について取り扱っていきたいと考えており、その手法としてはモデル予測制御などが挙げられる。本学会ではモデル予測制御に関して多くの論文が発表されていたため大変勉強になった。

d. その他

d-1 : 今回の国際技術交流全体を通じての所感
私にとって本学会への参加は初めてであり、大変勉強になった。同じ研究室の先輩や先生方からACCは非常にレベルの高い学会であり発表は非常に緊張するものであったが、無事に終えることができたため自信にもなった。また、同じ分野で有名な海外の先生方にもお会いすることができ、大変良い機会となった。同時に私の分野における世界での日本の存在感も認識することができた。
学会での討論は英語でもそれなりに対応できたが、何度か聞き返してしまうこともあったため、これから世界で活躍するために英語の勉強に励もうと感じた。

d-2 : 本国際技術交流援助についての所感
募集を知ったきっかけは、研究室の先輩が貴財団へ応募した経験があったためです。貴財団では事前に(国際会議参加前に)援助が受けられたことが非常にありがたかったです。私は事前に援助が受けられなかった場合、参加できなかったため助かりました。
貴財団の支援のお蔭で国際会議に参加することができ、大変貴重な経験を得ることができました。誠に感謝しております。

d-3 : 次回の開催地について
7/6~8の3日間 アメリカ ボストンにて開催される。

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