国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

平成26年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
西野 俊佑
(北陸先端科学技術大学院大学 マテリアルサイエンス研究科)
会議名
International Conference on Thermoelectrics 2014
期日
2014年7月6日~10日
開催地
米国 テネシー州 ナッシュビル

1. 国際会議の概要

Plenary Session会場

International Conference on Thermoelectricsは、熱電変換技術に関する研究者が世界中から集う国際会議である。今回のICT2014は米国のテネシー州ナッシュビルにあるRenaissance Nashville Hotel にて、現地時間7月6日から10日までの5日間にわたって行われた。発表件数は500件近くにのぼり(おおよそ200件の口頭講演と300件のポスター講演)、関連企業の出展ブースも含めて、活発な議論が行われた。米国での開催ということで講演者の50%は米国出身だったが、日本の研究者もそれに次ぐ約20%を占めたほか、中国や韓国といったアジア圏の研究者の姿も多く見られた。

全体的な講演内容としては、各種熱電材料についての性能評価および性能向上への取り組みに関する報告が中心となった。今回は特にシリサイド系やBi-Te系の材料に関する講演が目立ち、実際にこれらの材料を応用したユニークなモジュール作製に関する技術も多く発表された。熱電発電の実用化に向け、より応用に近い部分の研究が世界的に加速していることを実感した。

2. 研究テーマと討論内容

私は “Thermal conductivity measurement of aggregated (Bi1-xSbx)2Te3 nanoparticles using 3ω method” という題目で発表を行った。

熱電発電のより広範な応用のために、私たちはBi-Te系材料を用いた熱電インクの創成を進めており、これをインクジェット印刷技術に応用することで基板上に熱電モジュールを作製することに成功した。印刷した熱電インクは、表面が非常に粗い厚膜の形状をした、ナノ微粒子の凝集体になる。従来の方法では、このような試料の熱伝導率をうまく測ることができなかった。

私は、熱伝導率の膜厚依存性から試料の熱伝導率を評価する「二方向熱流モデル」を新たに考案し、これを薄膜やナノワイヤ等のナノ構造材料の熱伝導率測定法として知られる3ω法に導入することで、表面の粗い厚膜状試料の熱伝導率を測定することに初めて成功した。

ポスター講演の様子

質問者との討論は、一般的な3ω法と今回改良を施した私たちの手法の違いや、その利点についての説明が中心になった。この測定手法については、日本人研究者だけでなく、中国や欧州の研究者にも興味を持っていただき、「面白い研究だ」という嬉しい言葉も受け取った。それだけでなく「自分たちが作製した材料の熱伝導率を測定してみてほしい」という有り難いオファーも届くなど、非常に充実した討論ができた。また、熱電インクの作製法や、インクジェット印刷された熱電モジュールについても多くの研究者に注目され、現状の熱電性能はどうなのか、性能向上のためにどのような取り組みを行っているのか、今後どういったところに応用していくことができるか、などについて多くの議論を交わすことができた。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

ナッシュビルのメインストリート

ポスター講演時には中国人の学生と知り合い、連絡先を交換した。互いに英語がうまく話せず、意思の疎通には苦労したが、そんな中でも積極的にコミュニケーションをとろうとする彼の姿勢は素晴らしく、見習わなければならないと感じた。また、同じく3ω法を扱っている若手研究者や学生の方々とも情報交換するなど交流を深めた。会議以外でも、ナッシュビル特有のカントリーミュージックを聴きながらのディナーなど、現地の文化を体験し楽しむことができた。

今回のICT2014は、私にとって初の国外での学会発表であり、同時に初の海外渡航でもあったため、出発前は大きな不安を抱いていた。しかし実際に行ってみると何をするにも新鮮で刺激的だった。忘れられない5日間になった。

最後に、ICT2014への参加にあたり、多大なご支援をいただいた丸文財団に心より御礼申し上げます。

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