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国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・
参加者名
吉川 尚孝
(京都大学 理学研究科)
会議名 Optical Terahertz Science and Technology (OTST2017)
期日 2017年4月2日〜7日
開催地 ロンドン、イギリス
1.国際会議の概要

OTST2017 (Optical Terahertz Science and Technology) はテラヘルツ(1012 Hz)周波数の光のテクノロジーおよびテラヘルツ光を用いた基礎科学の研究に関する会議であり、第7回にあたる今回の会議はイギリスの首都ロンドンにて開催された。世界各国から発表者が集まり、2件のプレナリー講演と11件の招待講演を含む92件の口頭発表および93件のポスター発表が行われた。すべてのプログラムがシングルセッションで行われるため参加者は常に一つの部屋に集まり、密な議論が活発に行われる点はこの会議のよいところである。また、会議の初日にはチュートリアルセッションと称して学生や分野に参加して間もない研究者たちに向けたレクチャーがある点は特徴的であり、世界の著名な研究者たちが実に半日をかけてそれぞれの専門分野について概説するのを聞くことができる。また、次回の会議にあたるOTST2019は2019年にアメリカ・ニューメキシコ州のサンタフェで行われる予定である。

2.研究テーマと討論内容

”High-harmonic generation in monolayer materials”という題目で口頭発表を行った。高調波発生は、媒質の非線形性に由来して励起光の整数倍の光子エネルギーを持つ光を発生する現象である。その極限というべき高次高調波発生は、極紫外領域まで達する波長変換を実現し、アト秒(10-18秒)光パルス発生の唯一無二の手法であると同時にそれ自身が強い光電場下での電子の振る舞いを調べる重要な現象である。特に最近、固体からの高次高調波が観測されたことでさらなる注目を集め、高強度場物理における現在最もホットなトピックといえる。現状、いくつかのグループによって異なる理論モデルが提唱されており、そのメカニズムが盛んに議論されている。我々は、シンプルな2次元系における実験結果が不可欠であると考えた。なぜなら、バルク試料を用いると位相整合条件などの伝搬効果が高次高調波発生の本質的な性質を隠してしまうからだ。そこで最もシンプルな2次元系としてグラフェンを対象に高次高調波発生の研究を行った。

中赤外光パルスを励起光として、最大9次までの高調波を観測した。励起偏光依存性を調べることで、楕円偏光励起下で高次高調波が増強され、また高調波の偏光が回転するという、他の物質では観測されていない性質を見出した。励起光楕円率をパラメータとして発生効率を詳細に調べ、共同研究によって理論モデルとの整合性を確かめた。バンドギャップ(グラフェンでは0 eV)が重要であると考え、有限ギャップ(1.85 eV)を持つ単層MoS2を対象に比較実験を行った。楕円率依存性に明らかな違いを見出し、バンドギャップの違いによる高次高調波発生メカニズムの本質的な変化に由来すると結論づけた。

3. 国際会議に出席した成果(コミュニケーション・国際交流・感想)
≪ラッセルスクエア≫

世界のトップの研究者の講演を聞く良い機会であり、また食事の場などで国際交流を深めることができた。自分の発表では、質問の意図を完全に理解することができず、正しい答えができなかった部分もあるが、それも含めて貴重な体験になった。個人的には自身の今後の進路を決める時期であるため、国際会議の場でたくさんの方々と交流できたことも重要なことであった。運良くずっと晴天と天候に恵まれ、1週間ロンドンの美しい街に滞在できたことも良い思い出である。

最後になりますが、本国際会議に参加するにあたり、丸文財団からご支援をいただきましたこと、心より感謝申し上げます。

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