国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

平成28年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
西尾 樹
(東北大学 大学院工学研究科)
会議名
Applied Superconductivity Conference 2016 (ASC 2016)
期日
2016年9月4日~9日
開催地
アメリカ合衆国 コロラド州 デンバー

1. 国際会議の概要

学会会場の様子

Applied Superconductivity conference 2016 (ASC 2016) は核融合炉のような大規模な超伝導マグネットから小型機器に至るまでの幅広い超伝導応用技術の発展を目的とした国際会議である。1966年にアメリカニューヨーク州のブルックヘブン国立研究所で初開催されてから、アメリカ各州でほぼ2年ごとに開催されており、今年で50周年を迎える。

27回目となる今年は、コロラド州デンバーにて9月4日から9日まで開催された。48カ国から約1,700人の研究者が参加し、マグネット技術のみならず幅広い超伝導技術に関する交流が行われた。また50周年を迎えるメモリアルイヤーであることから、会議では特別セッションとして超伝導技術の過去と未来や、今後さらなる発展が期待される高温超伝導についてなど世界の権威ある研究者の講演が開催された。さらに学生の優良発表者コンテストが開催されるなど若手研究者の育成にも力を入れている。

次回は2018年10月28日から11月2日までワシントン州シアトルでの開催を予定しており、今後も本会議の発展が期待される。

2. 研究テーマと討論内容

研究題目「Improvement heating and loading process for indium inserted mechanical lap joint of REBCO tapes」でポスター発表を行った。

発表の様子

高経済性・高信頼性の革新的核融合炉実現に向け、重要機器の一つである超伝導マグネットを分割製造・機械的接合する「分割型高温超伝導マグネット」が提案されている。本コンセプト実現に向けて超伝導導体接合部の電気抵抗が問題となるが、超伝導導体の表面にインジウム箔を挿入して接合するインジウム挿入式機械的接合体系により100 kA以上の通電に成功し実証性を示した。本会議ではインジウム挿入式機械的接合部の製作時に温度制御を行うことで安定した低接合抵抗を実現する熱処理接合法の条件の最適化の発表を行った。

本研究では従来の熱処理を用いない接合法に比べ接合抵抗を60 %低減し、本会議で他研究者から発表され高い関心を集めたはんだ接合法と同程度の性能を示した。本接合法は他接合法では困難である接合部の着脱が可能な点で優位であり、加えて低接合抵抗を実現したことで核融合超伝導マグネットの研究者のみならず、幅広い研究者の関心を集めた。加えて現研究では明らかにされていない接合抵抗要因の詳細分析や、接合部の大型化に向けた取り組みにも興味がもたれており、今後の研究課題として取り組む予定である。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

本会議では核融合関係の研究者のみならず、幅広い分野の研究者と交流することができ勉強になりました。他分野の研究者とも議論することで自分では想定していなかった点にも目を向け、今後の研究方針を幅広い視点で見直す機会をいただきました。ポスター発表では多くの人に集まっていただき、活発な議論を行うことで非常に充実した時間が過ごせました。英語力を補うためにポスターの図や、ノートに書いた絵や数式で説明を行いましたが、厳しい質問に対しては的確に答えることの難しさを感じました。より簡潔に的確な回答ができるように日常生活から英語力の向上を図りたいと感じております。また他研究者の発表では研究速度の速さを感じました。前回、研究段階であったものが製品化段階となっているものもあり驚きを感じました。私たちの研究にはまだまだ課題も多くあると感じておりますが、いつかこの研究成果が役に立てるようにと頑張れるモチベーションとなりました。国際交流としては会議中のみならず会場外でも多くの先生方と交流をする機会をいただきました。年齢が近い研究者とは特に仲良くさせていただき帰国後も交流をしています。これらの成果は私にとって大変貴重な経験となりました。最後になりますが、本国際会議に参加するにあたり多大なるご支援をいただきました丸文財団には心より感謝を申し上げます。

バンケットの様子

デンバーの町並み

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