国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

平成28年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
今立 呼南
(大阪大学 大学院工学研究科 機械工学専攻)
会議名
Seventeenth International Conference on the Science and Application of Nanotubes and Low-dimensional Materials (NT16)
期日
2016年8月7日~13日
開催地
オーストリア / ウィーン

1. 国際会議の概要

Nanotube (NT) conference はカーボンナノチューブ、ならびにグラフェンやその他の低次元材料の科学および技術の発展を目的とした国際会議である。
17回目の開催となる本年の参加者は約400人、約30国籍であった。本会議はシングルセッションで進行を行っており、参加者全員がナノチューブに関する幅広い発表を聞くことができる。また、ポスターセッションに多くの時間をとっており、世界の様々な研究者と活発な議論を十分にすることができる。

本年の開催地であるオーストリアのウィーンは一般的に音楽の街で知られ、モーツアルトやベートーベンの出身地である。それに加え、ウィーンはボルツマンやシュレディンガーを生み出した物理学の街でもある。本会議が開催されたウィーン大学には本学出身の有名な物理学者の胸像が並んでいた。休憩時間には参加者たちがシュレディンガーの胸像の前で写真を撮る姿が多く見られた。夏のヨーロッパの天候はカラッとしていて涼しく、1週間気持ちよく会議に参加することができた。

2. 研究テーマと討論内容

今回私は「Diameter-dependent Wettability of Carbon Nanotube as Studied by Atomic Force Microscopy」というタイトルでポスター発表を行った。
固体表面の濡れ性は生体適合性、潤滑、接着などを理解する上で重要な要素である。特にマイクロ・ナノメートルスケールにおいてはサイズ効果により表面・界面現象が支配的となるために、凝着、固液界面での界面抵抗や固液界面近傍の温度分布などに濡れ性が与える影響はきわめて顕著となる。このようなスケールにおける濡れ性を本質的に理解することにより、ナノ熱交換器、ナノドラッグキャリアなど、液体と接触するマイクロ / ナノエレクトロメカニカルシステム(MEMS/NEMS)デバイスの開発に貢献できる。

本研究ではナノメートルスケールの円筒構造を有するカーボンナノチューブ(CNT)表面においてCNTの曲率が濡れ性に与える影響を調べた。その結果CNT表面の濡れ性が直径10nm以下において変調を生じることを実験により初めて確認した。特に、直径4.5nm以下のCNTにおいては、過去の理論予測にはなかった新たな傾向が確認できた。
議論においてはCNT表面における濡れ性を電気化学的な視点や量子力学的な視点から多くの意見をいただいた。私は機械工学出身であったため今まで考えていなかった視点から意見をいただくことができ、今後の研究につながる手掛かりを得ることができた。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

本会議はCNTを中心とした国際会議であるため、参加者はCNTに関する合成、化学、光学、分光学、デバイス、材料等バックグラウンドが異なる研究者ばかりであった。そのため、どの発表においても多くの視点から意見を聞くことができ興味深かった。私のポスター発表においても化学、分光学、合成などを専門としている先生方に多くのアドバイスをいただくことができた。また、著名な先生方から今後の研究に期待していると言っていただけたときはとてもうれしく、今後の研究の自信になった。
学会終了後には海外の大学の学生達と一緒に夕食を頂いたときにもお互いの研究について熱く語り合うことができ、国際学会に参加してよかったと感じた。

最後になりましたが、本学会への参加にあたり、多大なる御支援を賜りました貴財団に心より感謝申し上げます。

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