国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

平成26年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
山崎 愛弓
(京都工芸繊維大学)
会議名
2014 Materials Research Society Fall Meeting and Exhibit
期日
2014年11月30日~12月5日
開催地
アメリカ合衆国、ボストン

1. 国際会議の概要

学会会場 (Hynes Convention Center)

Materials Research Society は80ヶ国以上に会員を持つ世界的な学会であり、我々の暮らしを豊かにする材料づくりやものづくり技術の向上を目指し、化学, 物理, 生物学, 工学など様々な分野に携わる科学者が一堂に会し、材料の基礎的な知見から工学的応用までと幅広い視点からの意見交換が目的とされています。

Fall Meeting は毎年12月初旬頃にアメリカ合衆国のボストンで開催されており、今回参加した会議では6,000人以上の発表者が出席し、大きく分けてバイオマテリアル, ソフトマテリアル, エレクトロニクス, フォトニクス, エネルギー, サスティナビリティー, ナノマテリアルの合成, 理論・評価方法やシミュレーションなど多数のシンポジウムが開かれています。この会議においてノーベル賞受賞者をはじめとした世界をリードする研究者を多く見かけることから、本国際会議が世界の材料業界を先導していることがうかがえます。

2. 研究テーマと討論内容

本会議では、“Roles of water molecules in trapping carbon dioxide molecules inside the interlayer space of graphene oxides” という題目でポスター発表を行いました。グラフェンは単一炭素原子層で、その特異な電気的, 機械的性質から薄型ディスプレイ, 太陽電池, タッチパッド用の透明電極といった分野での応用が期待され、現在最も活発に研究が行われている分野の一つです。本研究では、少数層酸化グラフェンをナノレベルの吸着材料に応用することを目指しており、その層間を利用して温室効果ガスである二酸化炭素が捕捉可能かを密度汎関数法に基づき議論しています。特に、無水および水和二層酸化グラフェン層内の二酸化炭素移動に伴う活性化エネルギーに注目して、二酸化炭素捕捉において層内に存在する水分子の重要性を明らかにしています。

発表の様子

発表においては、電子状態計算の基礎的な側面から実際の材料設計における応用面までと幅広い分野にわたるコメントをいただきました。具体的には、密度汎関数法計算に使用した汎関数やスーパーセルの違いにより、二酸化炭素の移動挙動に変調がもたらされるのではないかという指摘を受けました。さらに二酸化炭素回収・貯留:CCS (Carbon Capture and Storage) に現在使用されているアミン溶液などに比べて、水ベースの二酸化炭素吸着材は扱いやすいとの好意的な意見もいただきました。この活発な議論を通じて水和酸化グラフェンを用いた新規CCS材料の創製に向けた知見を得ることができ、さらに研究のモチベーションを高めることができました。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

本会議は40ヶ国、6,000人以上の幅広いバックグラウンドを持つ研究者が集まっているため、発表時には幅広い分野の方々にポスターを見ていただき、有意義な時間を過ごすことができました。コミュニケーション面では、初めての国際会議ということもあり、渡米前は英語に不安がありましたが、皆さん熱心に私の発表に耳を傾けてくださり、想像していた以上に研究内容を伝えることやディスカッションを行うことができました。また、グラフェンのセッションを中心に他の研究者の発表を聞いて回り、世界をリードする研究の詳細を知ることができました。特に、酸化グラフェンの還元後のオゾン化により、酸化グラフェンのバンドギャップをコントロールし、その結果として蛍光特性を制御することが可能であるという発表は、本研究室で現在行っている酸化グラフェンのフォトルミネッセンス特性に関する研究に関連しているものであり、大変勉強になりました。

最後に、今回のMaterials Research Societyに参加するにあたり、貴財団より多大なご支援を賜りましたことを、心より感謝申し上げます。

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