国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

平成26年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
河村 息吹
(神戸大学 大学院工学研究科 電気電子工学専攻)
会議名
2014 Materials Research Society Fall Meeting and Exhibit
期日
2014年11月30日~12月5日
開催地
アメリカ合衆国、ボストン

1. 国際会議の概要

Materials Research Society Meetingは、材料系の国際会議としては最大規模で、現在、70ヵ国以上、16,000人以上の会員から構成されています。その対象分野は多岐にわたり、バイオテクノロジー、2D-materials、電気・光学特性等の幅広い分野で活発な議論が行われています。

今回の2014 MRS Fall MeetingはBoston, Massatusetts, USAで11/30 ~ 12/5の日程で開催され、合計72に及ぶシンポシウム毎に、活発かつハイレベルな議論が展開されました。本年のノーベル物理学賞受賞者である天野先生をはじめ、その分野をリードする著名な研究者の方々が多く参加している事からも、本学会の規模の大きさが伺えます。

次回の2015 MRS Spring Meetingは、2015/4/6 ~ 4/10の日程で、San Francisco, California, USAで開催される予定です。

Boston, USA (会場横のBoston University and Collegeにて)

2. 研究テーマと討論内容

本講演では、Ⅳ族酸化物をベースとする2次非線形光学材料に関して、特に代表的な第二次高調波発生(SHG)に着目しました。以下に示す2つのテーマについて、それぞれ個別のシンポジウムにてポスター発表を行いました。以下にその概要を示します。

(1) 高い比誘電率を有し、電界誘起抵抗変化等の有用な現象を示す二酸化ゲルマニウム(GeO2)の多結晶体の解析に関して、個々の結晶の配向方向や形状を定量的に議論した報告は存在しない。本研究では、GeO2結晶がSHGを示すことを利用し、偏光SHGマッピングに着目した。その結果、結晶の配向方向と形状を定量的に分析することに初めて成功した。講演では以上の内容を、実験結果と解析手法の詳細な説明を通じて報告し、議論を行いました。報告を行ったシンポジウムは、抵抗変化型メモリに関するセッションで、デバイス応用に向けた御指摘を数多くいただくことができました。

(2) シリコン(Si)フォトニクスは、半導体素子の基幹材料であるSiをベースとして光学素子を作製する技術の総称であり、小型で低コスト、環境親和性の高い光通信回路を実現できる可能性がある。その実現には、Si基板上に集積可能な発光・受光素子等が必要である。本研究では、Si基板上に容易に堆積可能なアモルファス薄膜に着目し、光スイッチング素子等に利用される2次非線形光学材料の開発を行った。

シリコンナイトライド(SiN)等のアモルファス薄膜からSHGを観測した報告は過去に存在する。しかし、その報告例はごく少数で、SHG発生の起源も不透明であった。本研究では、ゲルマニウム(Ge)をシリカ(SiO2)薄膜にドープすることで、SiO2薄膜からは発現しないSHGを誘起することに初めて成功した。GeをドープすることでSHGを誘起したという報告は、本論が最初である。また、SHGの起源が薄膜内の酸素欠乏欠陥に由来することを解明したという点も、本論の重要な成果である。以上の点を、より詳細な実験結果と合わせて、アモルファス構造に関する物性を調査するセッションにて報告しました。その結果、幅広い材料のアモルファス構造を専門に研究する方々と、活発な議論を行うことができました。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

上記の内容での講演を行った結果、同分野の方々からの詳しい御指摘だけではなく、異分野の方々からも興味を持っていただけ、自分が想定していなかった視点からの質問をいただくことができました。このような指摘は、研究をより幅広い視点で発展させていく上で、極めて重要な成果でありました。また、著名な研究者の方々の講演を実際に公聴できたことで、自分の研究分野を取り巻くリアルタイムな動向を肌で感ずることができ、国内会議では得難いモチベーションを得ることができました。また、本学会における最大の収穫は、同じ研究に携わるBoston UniversityのPh.Dの講演を聴き、実際に研究室を訪問し、活発なディスカッションを行えたことにあります。このように、自分と同じ分野で、同じ方向性を持ち研究を進める方と直に話せたことは、これからの研究の方向性・モチベーションを高める最高の機会でありました。

最後になりましたが、本学会への参加にあたり、多大なる御支援を賜りました貴財団に心より感謝申し上げます。

Boston Universityにて

平成26年度 国際交流助成受領者一覧に戻る

ページの先頭へ