国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

平成25年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
國本 雅宏
(早稲田大学 ナノ理工学研究機構)
会議名
224th Electrochemical Society Meeting (ECS Meeting)
期日
2013年10月27日~11月1日
開催地
アメリカ、サンフランシスコ、ヒルトンサンフランシスコ

1. 国際会議の概要

開催地サンフランシスコの街並み

学会会場ヒルトンホテルのロビーの様子

224th ECS meeting は、電気化学に関する米国の学会、The Electrochemical Society が開催する国際的な講演会の第224回大会です。The Electrochemical Society は、表面処理、腐食、電池など電気化学に関連する13の分野に特化した大規模な学会で、講演大会を春季と秋季に分けて毎年2回催しています。今回もおよそ50のセッション、3,000を超える件数の発表を組み込んだ盛況な大会となり、米国サンフランシスコ・ヒルトンホテルにて、10月27日から11月1日までの約1週間、活発な討論が行われることとなりました。さらに今回は、近年極めて高い関心を集めているエネルギー問題について当該分野の著名な研究者らが議論を交わすシンポジウム、Electrochemical Energy Summit 2013も併せて開催され、注目度がさらに高まっていたようでした。このエネルギー問題への関心の高さをさらに裏付けるように、電池、特にLiイオン電池に関するセッションでは、一部立ち見の聴衆が出るほど参加者が来場し、ひときわ白熱した討論が行われているようでした。その他、電池以外のセッションにも多くの研究者が来場し、講演会場前のスペースや会場となったヒルトンホテルのロビーは、講演での議論の続きを展開したり、講演内容や研究計画の打ち合わせをしたり、研究者同士の旧交を温めたりする人々で大変活発な様子となっていました。大会は、予定通りの日程で盛会のまま会期を終了しました。次回は225th ECS meeting としてフロリダ州オーランドにて2014年5月11日から16日にかけ開催される予定です。

2. 研究テーマと討論内容

講演風景

私は、電気化学で最も重要となる電極界面反応を、量子化学計算手法を用いて解析する研究に従事しています。特に、未だ解明されていない部分の多いめっき反応の反応メカニズムを解析することを目的とした研究が主体です。今回の大会では、外部電源を利用して基板上に金を析出させるというエレクトロニクス分野の要素技術、電解金析出のメカニズムを、前述の手法を用いて理論的に解析した研究をまとめ講演しました。電解析出では、基板上に析出させる前の金イオンを溶液中で安定に保つために種々の錯化剤を液中に添加しますが、その錯化剤の働きに関する分子レベルの詳細な情報が不足しており、プロセスの環境負荷低減やコスト削減に際しての最適化指針が立て難くなっているのが現状でした。今回の研究はそうした問題に対する検討の第一歩として進めたもので、得られた理論的な知見のみならず、初の試みとなった電解析出反応の理論モデル化の手法も議論の大きな争点になりました。発表後の討論では、これまでの電解析出実験の問題を分子レベルないしは電子構造のレベルで初めて詳細に議論した内容として高く評価していただけました。また、今回の理論解析とこれまでの研究から広く知られている一般的な実験事実との間の対応性にも焦点が当てられることになりましたが、これに関してもアピールすることができ、大きなインパクトを以って成果を報告することができたと感じました。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

セッション終了後Nathan Lewis教授と(後右が私)

今回の国際会議では、既に詳述した自身の研究成果発表に対するポジティブな討論結果の他、次の3点について特筆すべき成果がありました。

まず1点目は、世界的な研究者による、これまでにもあまり経験したことのないような大変白熱した活発な討論を多く見ることができた点です。特に今回は、世界的なエネルギー研究者であるカリフォルニア工科大学のNathan S. Lewis教授の講演が予定されているということで注目していましたが、定評通りの迫力ある講演で、収穫の多い1時間でした。更に講演後の討論における意見交換が、これまでに経験したどのセッションの質疑よりも活発に行われていたことに大変刺激を受けました。

レセプション終了後の集合写真
(後段左から1番目が私)

2点目は、セッションのレセプションで多くの先生方、若手の研究者の方と交流できた点です。このレセプションでは、Romankiw博士、Alkire教授などの、電気化学の学会で大変著名な先生方をはじめ、研究室間の共同研究活動もさせて頂いている電解析出分野のトップ研究者のZangari教授、さらには、国内外の研究機関、または企業で研究活動を進める若手の研究者など実に様々なメンバーが一同に会することとなり、大変意義深い時間となりました。特に今回は、電気化学や固体物性を研究する若手の間で交流を深められたことが、最も大きな成果と考えており、今回同じ時間を過ごした方々とは今後も継続して情報交換をしていきたいと考えています。

3点目も、やはり各国の若手研究者の方々と交流できた点で、こちらは量子化学計算の分野の研究者との交流です。前述した電気化学分野の研究者の方々とは、また一つ違った研究哲学やアプローチを持った方々であっただけに、こちらの交流も大変刺激的で、今後の活動につながる交流ができた実感を強くしました。

総じて、本学会を通し、今後の研究活動を大きく前進させるきっかけをつかむことができました。最後に、今回の派遣に際し多大なご支援を賜りました丸文財団に心より感謝申し上げます。

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