国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

平成25年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
川崎 聖治
(東京大学 物性研究所)
会議名
2013 Materials Research Society Fall Meeting
期日
2013年12月1日~6日
開催地
The Hynes Convention Center, Boston, Massachusetts, USA

1. 国際会議の概要

学会会場入り口

Materials Research Society (MRS) は、毎年春と秋に一度ずつ年2回の国際会議を開催しています。春はサンフランシスコ、秋はボストンで開催され、世界中から1万5千人を超える参加者の集う大規模な国際会議です。対象とされる分野は、生物科学、電気電子材料、光学材料、触媒科学、有機化学、無機化学、エネルギー材料など、多岐に渡り、本会議では合計50を超える分野のシンポジウムが開かれました。会議では、様々な分野の研究者が様々な視点で研究した成果を討論し、広く深い議論が交わされます。そのため、本会議に出席することは、物質科学の研究者としての視野を広げるためにも深い議論をするためにも有益な機会です。また、一流の研究者が数多く招待されるため、普段は聞くことのできない貴重な講演を聴くことができます。次回の秋の会議は、2014年11月30日~12月5日に同会場にて開催される予定です。

今回の会議では、特に「ペロブスカイト型太陽電池」の研究が大きな話題になりました。これは、ペロブスカイトの結晶構造を持つCH3NH3PbI3を中心とする材料群を用いた太陽電池であり、この物質は高価な元素は含んでおらず安価、かつ液相のプロセスが利用できるという事で量産性の高い太陽電池製造の期待が高まっています。ここ数年で革新的な研究成果の報告が相次ぎ、本会議では臨時のシンポジウムが開かれるほどの盛り上がりでした。今後の展開が楽しみな研究分野です。

2. 研究テーマと討論内容

「光触媒」をテーマに研究をしています。近年のエネルギー・環境問題を背景に太陽光のエネルギーを化学エネルギーに直接変換することのできる光触媒材料の研究が世界中で行われています。

ポスター発表の様子

筆者は、“Photocatalytic activity and electronic structure of Rh- and Ir-doped SrTiO3 for solar water splitting”という講演題目でポスター発表を行いました。RhドープSrTiO3という材料は、その可視光応答性と水中での安定性から高い光触媒特性を示す材料の一つとして注目されています。RhやIrといった遷移元素をドーピングしたSrTiO3では、遷移金属の形成する不純物準位が可視光応答性に寄与しており、ドーピングする遷移金属の元素やその価数を変化させることで、材料の色は様々に変化し、それに伴って光触媒活性も大きく変化します。本講演においては、RhまたはIrをドーピングしたSrTiO3について、その元素の種類や価数(Rh4+,Rh3+,Ir4+,Ir3+)を変えた場合の光触媒特性の変化を系統的に評価しました。特に、遷移金属の形成する不純物準位の位置の重要性に着目し、光吸収効率と光励起キャリアの電荷輸送効率に明確なトレードオフの関係があることを示しました。この結果は、高効率な光触媒開発に重要な知見であり、ドーピング系の光触媒材料の開発に指針を与えるものです。3時間のポスター発表では、多くの研究者に興味を持ってもらい、実験方法に関することから今後の光触媒開発に関わる本質的な深い議論まで時間を忘れて討論することができました。本会議のポスターセッションの特徴は、1つの大きな会場で同時に500人の研究者がポスターを掲載し発表するところにあります。異分野の研究者と意見を交わすにはとてもよい環境であり、物質科学の研究者としての視野を広げることができました。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

海外で開催される国際会議に参加するのは今回が初めてでした。国内での国際会議には参加したことがありましたが、必然的に日本人研究者の割合が多く、「英語で発表する国内会議」という色合いが少なからずありました。しかし、今回のような大規模な国際会議では海外の研究者が圧倒的に多く、日本にいるだけでは触れ合うことのできない多様な研究者と意見を交わすことができました。文化や国籍を問わず研究の議論を交わす経験はとても良い刺激になりました。

ポスター発表中や休憩時間には多くの研究者とお話をすることができました。研究者としての人生設計においても役に立つお話を聴くことができ、また初対面の海外の研究者と議論を通して仲良くなることもできました。多くの人と議論をするほど、研究の考察も深まり、発展的なアイデアも生まれやすくなります。今回の国際会議の参加においても、議論を通して考えを整理し、今後の指針となるようなアイデアをいくつか得ることができました。

また、学会の空き時間を利用し、ハーバード大学とマサチューセッツ工科大学を訪れ、ボストンの文化的な雰囲気を肌で感じることができました。日本の良いところ・良くないところを考えるきっかけにもなり、自分の視野が広がったと実感しています。

最後になりますが、このような実りある体験をご支援いただいた丸文財団の皆様には深く感謝を申し上げます。今後も研究活動に励み、科学者として世の中の発展に貢献していければと思います。

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